「みらい工房西」リハビリ教室@藤棚地域ケアプラザ

地域活動訪問レポート
地域活動訪問レポート

藤棚商店街にある「みらい工房西」は、脳血管疾患や脳外傷等による後遺症を抱える方が通う、中途障害者地域活動センターです。ここでは、再発予防や自立促進・社会参加を目的とした多彩なプログラムが実施されています。軽作業やボッチャなどのスポーツ、調理実習やパソコン練習といった生活訓練、さらに日帰りバス旅行や地域交流等、外出や交流の機会も豊富です。また、高次脳機能障害に関する日常の困りごとやこれからの生活等についての相談支援も充実しています。ファーストステップとして、藤棚地域ケアプラザを会場に年間37回のリハビリ教室を開催しており、今回はその中でも年4回開催されている音楽療法教室を訪れました。
 
この日の参加者は4名。三澤所長、川島看護師、音楽療法士の前田キヨ子先生、ボランティア、見学者を含め計12名が集まりました。まずは前田先生のキーボード演奏に合わせ、オウム返しで歌います。「こん~に~ち~は♪、 み~な~さ~ん♪、うた~たり♪、はなし~たり♪…」
続いて肩と腕を回しながら「アーアーアー」、唇を合わせて「パクパクパク、マーマーマー」と発声練習。準備が整ったところで、懐かしい日本の歌を合唱しました。最初の曲は『赤とんぼ』。普段は言葉を発することが難しい方も、歌声は自然にあふれ出てきます。歌詞に込められた文化や風習が、言葉の発生を促し、回想法として脳の活性化や情動の安定につながるのだそうです。

休む間もなく、『虫の音』、『大きな古時計』、『もしもピアノが弾けたなら』へと続きます。鈴や鳴子、ハンドベルを使った演奏にも挑戦。休符やタイミングを合わせるには反射神経必要で、歌いながら演奏するのは難しい作業です。
「皆さん、これが合わないと音楽になりませんよ!」
先生の言葉に緊張しながらも集中、笑い、安堵、そして演奏後には拍手が起こります。
曲が変わるたびに楽器も変え、繰り返し挑戦することで場の一体感が高まっていきました。

最後の曲は『ふるさと』の予定でしたが、先生が思わず『めだかの学校』を歌いだしてしまうハプニングも。「ごめんなさい!みんながベルを真剣に持っている姿が可愛くて、間違えました!」
その場は大笑いとなり、緊張がほぐれ、頬が痛くなるほど、笑い合いました。参加者全員で作り上げたラストは、音楽を共有した仲間の一体感そのものでした。

「みんなで音を合わせると気持ちが良い」これまで単語しか出なかった参加者から、文章で言葉が返ってきます。思い出せなかった音楽の話を語り始めたり、両親が聞かせてくれたレコードの思い出を話してくださったりと、空間は達成感と高揚感に包まれ、終了の時間が惜しいほどでした。

音楽療法士の前田先生は、40年にわたり多様な方を対象に音楽療法を続けてこられた専門家です。ライブ企画や地域への普及活動にも取組み、「みらい工房西」との活動は20年に及びます。先生のリハビリは「本気で音楽をすること」。時間が経つにつれ、私も我が身を忘れ、音楽に引き込まれていきました。
音楽療法は、心身が活性化されて、QOL(生活の質)の向上をもたらします。リハビリに真剣に向き合うことで、自分を再評価する気持ちが芽生えたのではないでしょうか。今回の教室では参加者に表れた変化が心に良い影響をもたらす様子を目の当たりにし、大変貴重な体験となりました。ありがとうございました。

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